介護職は高齢化が進む日本社会において、非常に重要な役割を担う仕事です。未経験の方でも挑戦しやすい職種の一つとして注目されており、異業種からの転職者や新卒の若者まで幅広い層が介護職を選んでいます。しかし、未経験で介護職に就いた場合、想像以上のハードルや困難に直面することが少なくありません。体力や精神的な負担、コミュニケーションの難しさ、知識不足など、仕事に慣れるまでに多くの試練が待ち受けています。
これらの課題を放置すると、モチベーションが低下し、最悪の場合、離職を選ぶ結果にも繋がりかねません。そうした事態を防ぐためにも、介護職の「辛さ」を具体的に理解し、それに対処するための方法を学ぶことが重要です。本記事では、未経験で介護職に挑戦した人がよく感じる辛さや、実践的な解決策を詳しく紹介します。これから介護職を目指している方や、すでに介護現場で働いている方にとって、有益な情報をお届けします。
未経験で介護職になった人が仕事で辛いと思うこと
未経験で介護職になった人が仕事で辛いと思う代表例が下記の通りです。
- 体力的な負担
- 精神的なストレス
- コミュニケーションの難しさ
- 知識・技術の不足
- 時間的な余裕のなさ
- 感情のコントロール
それぞれについて説明します。
体力的な負担
介護職は、体力的に非常にハードな仕事です。日常的に利用者の身体を支える介助や、重い物品の運搬、長時間の立ち仕事が必要とされます。特に、利用者の移動や入浴介助といった業務は、腰や肩に大きな負担をかけることが多く、慢性的な腰痛や肩こりに悩まされる介護士は少なくありません。未経験者は、正しい身体の使い方を知らない場合が多く、不適切な姿勢での作業がケガのリスクを高める原因になります。
さらに、介護現場ではシフト制や夜勤が一般的です。不規則な勤務形態は、生活リズムを乱しやすく、慢性的な疲労感や体調不良を引き起こすことがあります。特に夜勤では、睡眠不足やストレスが体力の消耗を加速させるため、未経験者にとっては大きな壁となります。体力の限界を感じ、仕事を辞めたいと考える人も少なくないのが現状です。
精神的なストレス
介護の仕事には、精神的な負担が伴います。特に、利用者やその家族との関係においてストレスを感じる場面が多くあります。利用者が感情をコントロールできずに暴言を吐いたり、思い通りにいかない場面で八つ当たりされることも珍しくありません。そのような状況に直面すると、自己否定感や無力感を覚えることがあるでしょう。未経験者の場合、適切な対応方法が分からず、ストレスをため込んでしまうことも多いです。
さらに、介護の現場では、利用者の健康状態の悪化や命に関わる場面に遭遇することもあります。こうしたシビアな状況に対処するには、心の強さが求められますが、慣れていない場合は大きな精神的負担となります。仕事とプライベートの切り替えができず、家に帰ってからも仕事のことを考え続けてしまうケースもよく見られます。
コミュニケーションの難しさ
介護職は、利用者やその家族、同僚との円滑なコミュニケーションが求められる仕事です。しかし、未経験者にとっては、このコミュニケーションが大きな壁となることがあります。利用者の中には、認知症の影響で言葉がうまく伝えられない方もおり、その気持ちやニーズを汲み取るには経験とスキルが必要です。最初のうちは、相手の気持ちを理解できないことでトラブルになることもあります。
また、職場の同僚や上司との連携がうまくいかないケースもあります。介護職はチームで働く場面が多いため、指示の受け方や報告の仕方が適切でないと、職場で孤立してしまうことがあります。職場の人間関係が悪化すると、仕事自体が辛く感じられるようになるため、未経験者にとっては大きな課題です。
知識・技術の不足
未経験から介護職に就く場合、最初に直面するのが知識や技術の不足です。例えば、移乗介助や排泄介助といった基本的なスキルに不安を感じることがあります。また、利用者の健康状態を適切に観察し、必要な対応を行うためには医療や福祉の専門知識が欠かせませんが、未経験者はその基盤が薄いため、自信を持てない場面が多いです。
さらに、介護報酬や介護保険制度の仕組みについての理解が浅いと、業務全体の流れを把握するのが難しくなります。その結果、「自分だけができていない」と感じてしまい、孤独感や劣等感を抱くこともあります。知識や技術の不足は、仕事の効率や質に直結するため、未経験者にとって大きなストレスの原因となります。
時間的な余裕のなさ
介護現場では、常に時間との戦いがあります。一人一人の利用者に対して丁寧なケアを提供したいと考えていても、他の業務や次のシフトの準備に追われ、時間的余裕を確保することが難しいのが現状です。また、施設や事業所によっては深刻な人手不足が続いており、介護士一人当たりの業務量が過剰になりがちです。
時間的な余裕がないと、業務が雑になるだけでなく、利用者に対しても十分な対応ができないと感じることが増えます。これが、仕事への満足感ややりがいを低下させる要因となり、長期的に働くことが難しくなるケースもあります。
感情のコントロール
介護職では、感情のコントロールが求められますが、未経験者にとっては特に難しい課題です。利用者の急なトラブルや、思うようにいかない業務が続くと、イライラや焦りを感じることがあります。また、自分の努力が利用者や職場で認められないと感じると、無力感や悲しさに襲われることも少なくありません。
感情がコントロールできない状態が続くと、利用者や同僚との関係に悪影響を及ぼす可能性があります。また、感情的な負担を抱え続けると、心身ともに疲れ切ってしまい、仕事を続けることが困難になるケースもあります。
未経験介護士の辛さを和らげるための対策
未経験介護士の辛さを和らげるための対策は下記の通りです。
- 体力をつける
- 自己研鑽を行う
- 相談窓口を活用する
- プライベートを充実させる
- 目標を持つ
一つずつ紹介していきます。
体力をつける
体力的な負担を軽減するためには、日常生活から体力向上を意識することが重要です。例えば、ウォーキングやランニング、ストレッチを日課にすることで、基礎体力を高めることができます。さらに、筋力トレーニングを取り入れると、腰や肩への負担を軽減し、介助作業をよりスムーズに行えるようになります。
また、体力だけでなく、正しい身体の使い方を学ぶことも大切です。介護現場での身体の負担を減らすための技術を学ぶ講習会や研修に参加することで、効率的かつ安全な作業が可能になります。例えば、「ノーリフト」ケア（持ち上げない介護）の技術を習得すれば、利用者に優しい介助ができるだけでなく、自分自身の身体を守ることもできます。
加えて、日頃の食生活にも注意を払いましょう。バランスの取れた食事を心掛けることで、疲れにくい体を作ることができます。特に夜勤が多い場合は、不規則な生活の中でも栄養を補えるよう、簡単に準備できる健康的な食材を取り入れることがおすすめです。
自己研鑽を行う
知識や技術の不足による不安を解消するためには、自己研鑽が欠かせません。介護現場では、資格取得やスキルアップを目指すことで、自分の成長を実感しながら仕事に取り組めるようになります。まずは、介護職員初任者研修や実務者研修といった基礎資格を取得することを目指しましょう。これにより、基本的な介護知識と技術を習得することができ、自信を持って業務に当たることができます。
また、現場での経験を活かしながら、介護福祉士やケアマネジャーといった上位資格の取得を目標にするのも効果的です。こうした目標を持つことで、日々の仕事が自己成長に繋がっているという実感が得られます。さらに、オンライン学習やセミナー、介護関連の書籍を活用することで、最新の情報や実践的なスキルを習得することができます。
加えて、職場の先輩や上司にアドバイスを求めることも重要です。経験豊富な人から直接指導を受けることで、実践的なノウハウを短期間で身につけることができます。自己研鑽を続けることは、仕事への不安を軽減し、自分の成長を実感するための最善の方法です。
相談窓口を活用する
辛さを一人で抱え込まず、周囲に相談することは精神的負担を軽減するための重要なステップです。まずは、職場内で信頼できる同僚や上司に自分の悩みを打ち明けてみましょう。同じ職場の人々は、同じような経験をしていることが多く、具体的なアドバイスや共感を得られる可能性があります。
また、職場外の相談窓口やカウンセリングサービスを利用するのも有効です。自治体や介護関連団体が提供する相談窓口では、プロのカウンセラーや介護職経験者が親身になって相談に応じてくれることが多いです。同じ境遇の人々と交流できるコミュニティや勉強会に参加することもおすすめです。他人の経験や解決策を共有することで、自分だけが悩んでいるわけではないと感じることができ、心の負担が軽くなります。
さらに、オンラインフォーラムやSNSを活用して、介護職に関する情報交換を行うのも良い方法です。匿名で相談できる場も多く、自分の考えを整理したり、他者の視点を得る機会となります。相談窓口やサポートネットワークを活用することで、孤独感を軽減し、前向きに仕事に取り組むきっかけを作ることができます。
プライベートを充実させる
介護職は、忙しい日々の中でストレスが溜まりやすい仕事ですが、プライベートを充実させることで、心のバランスを保つことができます。まず、自分の趣味やリフレッシュできる時間を大切にしましょう。例えば、読書や映画鑑賞、自然の中での散歩など、自分がリラックスできる活動を積極的に取り入れることで、仕事のストレスを解消できます。
また、家族や友人とのコミュニケーションを重視することも大切です。仕事の話を聞いてもらうだけでなく、一緒に楽しい時間を過ごすことで、心がリフレッシュされます。忙しい日々の中でも、短い時間を有効活用し、大切な人々との絆を深める努力をしましょう。
さらに、休暇を積極的に取得することも重要です。介護職は責任感の強い人が多いですが、無理をしすぎると心身ともに疲れ切ってしまいます。計画的に休暇を取り、旅行や趣味に時間を使うことで、新たな活力を得ることができます。プライベートの充実は、仕事への意欲やパフォーマンス向上にも繋がります。
目標を持つ
目標を設定することは、日々の仕事に意義を見出すための有効な方法です。例えば、短期的な目標として「利用者とのコミュニケーションを円滑にする」や「基本的な介護スキルを習得する」といった具体的な課題を設定しましょう。これにより、日々の業務に取り組むモチベーションが高まります。
中長期的には、資格取得やキャリアアップを目標にするのも良い方法です。例えば、介護福祉士やケアマネジャーの資格を取得することで、将来的に業務の幅を広げることができます。また、専門知識を深めることで、利用者やその家族からの信頼を得やすくなり、仕事のやりがいや達成感も増すでしょう。
目標を設定する際は、達成までの具体的な計画を立てることが重要です。小さな成功体験を積み重ねることで、自信を深め、より大きな目標にも挑戦しやすくなります。目標を持つことは、未経験者が抱える不安や迷いを解消し、仕事に前向きに取り組むための原動力となります。
状況によっては転職することも視野に入れよう！
介護職での辛さがどうしても解消されない場合、転職を視野に入れることも一つの選択肢です。現在の職場環境が自分に合っていないと感じる場合や、過剰な業務量や人間関係のストレスが改善されない場合は、別の環境で新たなスタートを切ることで、働きやすさが大きく変わる可能性があります。
転職を考える際には、自分が何を求めているのかを明確にすることが重要です。例えば、「夜勤が少ない職場が良い」「研修制度が充実しているところで働きたい」「利用者一人一人にじっくり向き合える環境を探している」など、自分の希望をリストアップしましょう。また、転職サイトやエージェントを活用して、自分に合った職場を見つけるための情報収集を行いましょう。
ただし、転職を決断する前に、現在の職場でできる改善策を試してみることも大切です。上司や同僚に相談し、業務の調整や働き方の見直しが可能かを確認しましょう。それでも状況が変わらない場合は、前向きに新しい環境への挑戦を検討するのが良いでしょう。自分に合った環境で働くことで、介護職としてのやりがいを再発見できるはずです。
